現代のモデルカーの祖 John Day

2011.08.01モデルカー人物伝

 イギリス、フランス、イタリアを中心とするハンドビルド・モデルカー(ミニチュアカー)趣味世界の先駆者的存在と言えば、イギリスの「ジョン・デイ(John Day)」氏。 そんな彼が78歳で亡くなったのが2006年の6月。あれからもう5年が経とうとしています。

 ジョン・デイは、1970年代初頭から1/43スケールのホワイトメタル製モデルカー・キット開発を始め、1970年代半ばには膨大なラインナップを形成するに至りました。当時、一部の鉄道模型に用いられていた遠心分離鋳造技術をミニチュアカー世界に最初に持ち込み、エンスージァストが好む1950年代~当時最新鋭の車種まで、レーシングカーを中心とするラインナップを毎月定期的に発売して大きな支持を獲得しました。

 ホワイトメタル製キットにおける成功の後、1976年には当時のF1マシーン「マーチ761」の1/43ダイキャスト・ミニチュアカーをリリース、大量生産品メーカーへの転身を試みましたが果たせず、やがてメーカーとしての活動を停止。その後は、ハンドビルド・モデルカー世界における始祖の一人として、専門誌で時折取り上げられるような伝説的存在となっていきました。

 ジョン・デイが生んだホワイトメタル製キットは、現代の目で見れば原始的と呼ぶべき技術で製造されたものですが、車種の選び方やパーツ構成に認められるエンスージァスティックな感覚は特筆すべき点です。また、各々の題材であるレーシングカーが現役であった時代にオンタイムで製品化されたものである点においては文化遺産としての意義があるとも言えましょう。

 何よりジョン・デイは新しいマーケットの開拓者だったし、AMR、BBR、タメオといった後発メーカーにとっての先駆者でありました。このマーケットが1980年代~’90年代半ばに活況を呈し、その活況こそが現代のミニチュアカー・メーカーにとって、起業のヒントになったことは間違いありません。そう考えれば、ジョン・デイが存在しなければ、現代のモデルカー世界は全く異質な様相を呈していたかも知れないのです。

 ジョン・デイには3人の子息がおり、彼らは「ジョン・デイ ビークル・シーニックス(John Day Vehicle Scenics)」と銘打ち、鉄道模型アクセサリー・ミニカーのメーカーとして成功を収めています。


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