『精密・精巧』がキーワードだった時代
2011.08.04ヴィンテージ・ミニチュアカー
1960年代がダイキャスト・ミニチュアカーの歴史におけるゴールデン・エイジであったことに異論を挟む向きは、そうそういらっしゃらないでしょう。
もちろん1980年代末以降、現在にまで至る期間においても大変な隆盛を見たことはご存じのとおり。しかし1960年代のミニチュアカーと現代のものとでは、工業製品としていろんな点が異なり、それがそのまま嗜好品としての性格にも反映されていると言えるでしょう。
現代の製品の殆どは中国、マカオなどを中心とするアジア圏の工場で生産されており、ブランドは異なっても工場は同じという話もしばしば聞かれるほどですが、1960年代当時は、イギリス、ヨーロッパ諸国、北米など、世界中で生産され、メーカー毎の明確な個性、作りの違いと云った点が、趣味の重要なポイントとなっていたのです。
当時各メーカーが凌ぎを削る中で現れた1つの傾向が、『精密・精巧』に作るというものです。これはご存じイギリスの巨人、コーギーが代表格で、凝ったディテーリング・パーツやアクセサリー、開閉アクション、スプリングやギアを駆使したギミックなどが贅沢に奢られたモデルが数多く登場しました。時に1960年代半ばのことです。
イギリスの巨人に対抗した他国の例としては、デンマークのテクノ、そしてイタリアのポリトーイズ(後のポリスティル)です。
今日ご紹介するのは、ポリトーイズが1967年に発売した『アルファ・ロメオGS 1750 ザガート』の1/43モデル。実車は当時イタリアの自動車誌『クアットロルーテ』とアルファ・ロメオとのコラボレーションから生まれたクルマで、1750ジュリアのシャシーをベースとして戦前のグランスポルトのボディ・スタイルをモチーフとして限定生産された言わばパイクカー。ボディは勿論ザガートが手懸けました。
ポリトーイズのミニカーも実車同様、当初限定品として企画されたものらしく、ボックスには1200台限定生産だったことを意味するステッカーが貼られています。このモデルは当初トップ無しで発売されており、後にトップ付きが出ました。カラーは各々2色。ですから少なくとも初期ルーフ無しバ―ジョンは2色合計で1200台、従って1色辺り僅か600台という、当時としては破格の限定生産だったことが推測できます。
その極端な少量生産と共に驚くべきことは、その精密な作りです。それに関してはまた次回ご説明いたしましょう。