『モデルペットのおもひ出』

2011.08.04ヴィンテージ・ミニチュアカー

『切れの良いプロポーションで傑作が多いアンチモニー製の初期モデルペットの中でも、ヨタ8の人気は高い。前後フードが開閉するほか、トップが脱着できる』

 我が国初の本格的なミニチュアカー・ブランドと言えば、アサヒ玩具の『モデルペット』というのが定説。その第一号であるトヨペット・クラウン(観音開き)が発売されたのは1959年のことですから、現在48歳の私は未だ生まれてもいません。しかし改めてモデルペットの初期のラインナップを見てみると、“あ、これ買ってもらったな…”と思い出すモデルが何台かあります。

 中でも印象深いのが、1965年5月に発売されたNo.31の『トヨタスポーツ800』。色は淡いメタリック・ブルーでした。当時私は3~4歳。所謂“おばぁちゃん子”で、甘ったれでした。そんな私が、当時最も恐れていたのは常に厳しい表情を見せていた祖父。祖父が私に笑顔を見せたという記憶が無いのです。そんな厳しい祖父が買ってくれた唯一のミニチュアカーが、このヨタ8でした。だからこそ鮮明に記憶しているのでしょう。それにしても何故よりによって、怖い祖父とミニチュアカーを買いに行く羽目になったのか? 

 ぎこちなく手を繋いで、富山市街中心にあった玩具店“愛児堂”まで歩いて行きました。多分何も話しませんでした。ヨタ8を選んだ理由は、トップが脱着できるギミックに祖父が感心して “これにしなさい”というようなことを言われたからだったと思います。

 祖父は1966年11月に亡くなりました。彼は医師でしたから、今にして思えば、自分の余命を知っていたのかも知れません。だからそれまであまり接点を持てなかった孫と、買い物に出てみようと急に思い立ったのかも知れない。

 或いは逆に余命など知る由もなく、ただ機嫌が良かっただけのことだったのか…。

 いずれにしても50年近く経ってから、孫がこんな駄文をしたためることになるとは、想像もしなかったことでしょう。


ヴィンテージ・ミニチュアカー